コラム ヘッダー

消化器系疾患について

おなかの病気

便秘症

長時間にわたって便がおなかの中にとどまると、徐々に水分が失われて硬くなり、おなかが張ったりして更に排便が困難になります。
便秘だと感じておられる方は、まず適度に水分摂取を心がけることが大切です。

便秘のタイプには次のようなものがあります。

(1)けいれん性便秘

ポロポロとしたうさぎの糞のような便で腹痛を伴うもの。

(2)弛緩性便秘

排便に必要な腹筋が弱い高齢の方や女性に多く認められ、わりと太い便がでるもの。

(3)直腸性便秘

便意を我慢する習慣のある方に多く、便意が催されなくなるもの。

以上の3つは、食事を規則正しく摂り、体を動かすことである程度コントロールできるでしょう。
しかし、中には(4)症候性便秘といって、大腸癌・腸閉塞などの狭窄が原因で生じるものがあります。
鉛筆状の細い便が出る、または便に血が混じる場合は、大腸カメラなどの精密検査を行うのをお勧めいたします。

ヘリコバクター・ピロリ菌

ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ菌)は胃の中にひそみ、胃潰瘍や胃癌などに関与する細菌として注目されています。
中高年の過半数がピロリ菌に感染しており、また胃癌患者の大部分にピロリ菌感染がみられることは大きな問題です。

ピロリ菌が感染した状態が続くと萎縮性胃炎を生じ、この萎縮性胃炎の粘膜に胃癌が生じやすくなります。
ピロリ菌に感染しているかどうかの検査には、血液や尿中の抗体を調べる方法や便中の抗原検査、呼気を用いる尿素呼気試験、内視鏡検査の際に調べる方法などあります。

治療方法は、3種の薬(胃酸分泌抑制薬と2種の抗生物質)を一週間服用します。
初回で除菌できる人は80%程度で、除菌しきれない場合は薬の組み合わせを変えることで再度の除菌が可能です。

ピロリ菌の感染診断や治療については、保険適応の有無や副作用の問題もありますので、検査・治療希望の方はご相談下さい。

逆流性食道炎(=胃食道逆流症GERD)(胸やけ)

逆流性食道炎は、胃と食道の境界部分がゆるむなどして、胃酸を含んだ胃内容物が食道へ逆流することにより生じる病気です。
「胸やけがする・酸っぱいものがのどに上がってくる」といった症状が主ですが、「のどがつまった感じがする・声がかすれる・口が苦い・咳が続く・睡眠時無呼吸」などの呼吸器症状を生じることはあまり知られていません。
これらの症状が食道への胃酸逆流が原因で生じていることに気づかないために、長い間症状を我慢しておられる方が多いのではないでしょうか。

逆流性食道炎を疑う場合、まず胃酸逆流症状を確認するための簡単な問診を行い、続いて内視鏡検査(胃カメラ)で食道粘膜の炎症を確認します。
内視鏡検査は苦手な方もおられると思いますが、食道がん・胃がんなどの病気を見逃さないためにも一度は検査を受けておかれる方が良いでしょう。

原因と分かったら食べ過ぎ・飲みすぎをしないなどの生活指導と、胃酸分泌をおさえるお薬でほとんどの症状は良くなります。
気になる症状のある方はご相談下さい。

機能性胃腸症(胃もたれ)

消化器外来をしていますと、胃のあたりの痛みを訴えながらも胃や十二指腸などには異常を認めない患者様によく遭遇します。
最近そのような疾患の一つとして「機能性胃腸症」という病態が注目されています。
この「機能性胃腸症」とは従来からの症候性胃炎や神経性胃炎に相当する疾患群と考えられます。気になる方は□のチェック項目で確認してみましょう。

□わずらわしい食後の膨満感(=食後の不快なおなかの張り)がありますか?
□早期の膨満感(=食べてすぐのおなかの張り)がありますか?
□心か部痛(=みぞおちの痛み)がありますか?
□心か部灼熱感(=みぞおちの熱くなる感じ)がありますか?

このうち一つ以上の症状が6ヶ月前から続いていて、超音波検査や胃カメラ検査などで異常を認めなければ可能性があります。他院で「検査では異常なし」と言われた方も、症状が持続するようならば一度ご相談下さい。

過敏性腸症候群(下痢・便秘・腹痛)

仕事の途中で腹痛を起こしトイレに駆け込む。登校前に必ずおなかが痛くなる。このような症状を引き起こすものに、過敏性腸症候群(IBS)という疾患があります。
大腸検査や血液検査などでは異常が認められないのが特徴で、下痢や便秘・腹痛などが主な症状の機能性の疾患です。

原因の多くは過度の緊張やストレスとされており、成人の10人に1人が該当する現代病ともいえます。
慢性的に下痢や便秘・腹痛を繰り返して日々の生活に支障を感じつつも、なんとなく放置されている方は多いと考えられます。

IBSのタイプには(1)下痢型 (2)便秘型 (3)下痢便秘混合型 (4)腹痛型 (5)腹部膨満型 (6)腹部症状不安型などがありますが、診断に際しては大腸検査などの専門的な検査を行い、その上で治療法の検討を行います。

おなかの症状で困っておられる方、IBSの診断・治療について一度ご相談下さい。

食道癌

わが国で1年間に食道癌にかかる人はおよそ9,000人と言われており、胃癌の10分の1の発生頻度です。

2005年のデータでは食道癌の死亡者は総数で11,182人、男性で9,465人、女性で1,717人と男性に多く認め、全癌の3.4%を占めます。飲酒と喫煙の両方の嗜好を持っておられる方に高頻度に認められます。

治療は、早期癌であれば内視鏡的治療が行われますので、飲酒・喫煙歴のある方はきちんと検診を受けて早期発見をすることが大切です。

胃癌

胃癌は消化器癌の中でも治りやすいがんのひとつです。早期胃癌とそれ以外の進行胃癌に分類されます。

早期胃癌とは、病変が広がっていない癌や浸潤している深さが浅い癌を言います。早期胃癌の場合、ほとんど転移を起こすことは無く、治療によりほぼ100%治ります。一方、胃壁の筋層を越えて広がった進行胃癌の場合は転移が問題となり、それぞれの進行度に応じた治療法の選択が必要となってきます。

最近では内視鏡的治療が普及してきていますので、検診で早期発見に努めましょう。

大腸癌

大腸癌は大きく分けると、結腸癌と直腸癌の2つがあります。

日本人にとって増加傾向が著しく、毎年約6万人が罹患し21世紀には胃癌を抜くとの予測もあります。大腸癌による死亡は、男性では肺癌・肝臓癌に次いで3番目、女性では1番目に多くなると推定されています。

検診で便潜血(+)の方や、下痢・便秘・便が細い・便に血液が混じるなどの症状のある方は積極的に大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。